「農家はみんな知っている。良い野菜を作るには良い土が必要だということを。」
人においても、良い思考や良い学びには、考えるための良い土台が必要です。その土台を作るには内省(リフレクション)という行為が欠かせません。
内省とは、自分の考えや行動などを深くかえりみること。手法による振り返りです。
学校や職場などで同じ経験をしても、経験を糧にして学び成長できる人と、同じ失敗を何度も繰り返す人がいます。この違いは経験を学習に変換し成長するための考え方にをできるかです。
現在のように不透明で不確実かつスピードが速い時代において、同じ失敗を繰り返さないで、適切な行動が行えるようになるには思考の土台が必要です。
内省は行為の変化を起こすことを意識した振り返りです。
コルトハーへン先生の提唱するリアリスティック・アプロ―チから引用すると、
1.学校や授業においてある行為を行なった際に、
2.自分の行為に関する関心、不安や懸案事項をもとに実践経験を振り返り、
3.そこで行為の非合理な面や不安な感情をもたらす原因に気づき、
4.それ以外の行為を取る可能性を拡大して吟味し、
5.新しい選択肢を選んで次の行為を起こす、
という手順による「変化を促す振り返り」です。
内省を行うことによって3つの効果が現れます。
1.自分を客観視することによって感情と事実両面を見る事ができるようになり、自分の中の多面性に触れられます。固定観念の見直しで「自己中心的な見方から相手の立場を慮るようになった」という変化が起こりやすくなります。
2.自分と対峙することで「大切にしてきたことを思い出した」自分の価値観がたしかになってくる自己理解の深さに伴い他者理解が深まります。
3.内省を繰り返すことで新しい気づきや洞察が生まれ、そこから引き出される主体的な行為です。しかも慣例的、惰性的な表層行為ではなく、気づきを生かした本質的な行為が導き出されます。
ワークショップでは、4~5名のグループを作り、設定したテーマにそって自分の行動・思考・感情に関して対話による振り返りを行います。
はじめに、動画や静止画、参考文献、ゲストスピーカーなどでテーマの問いを共有します。その後、ファシリテーターの進行の元で対話を進めていきます。
内省は個人で行う営みですが、少人数グループで対話することにより自分1人では導き出せない思考の幅を広げることができます。
ファシリテーターは場の深まりに応じて、それぞれの局面で以下のような問いかけをしていきます。
*第1局面
・何を達成したかったのか?
・特に何に注意したかったのか?
・何を試してみたかったのか?
*第2局面
・具体的な出来事はどういうものだったのでしょうか?
・何がしたかったのか?
・何を思ったのか?
・どう感じたのか?
・生徒達は何をしたくて、何をしていて、何を思い、何を感じていたのだと思いますか?
*第3局面
・第2局面で答えたそれぞれの答えの相互関係性はどうですか?
・学校・文脈が全体としてそれにどのような影響を与えていますか?
・あなたにとって、それはそういう意味を持ちますか?
・問題は何でしょうか?ポジティブな発見はありますか?
*第4局面
・別の選択肢としてどのようなものが考えられますか?
・それぞれの選択肢の利点と欠点は?
・次回はどのようにしようと決心しましたか?
このワークショップを通じて、
「他人の価値観を知る(違う考え方があることを知る)」
「自分の価値観に向きあう(内面を知る)」
「気付きを得る(新しい視野を広げる)」
「行動が変わる(よりよい一歩を踏み出す)」
を体感することができます。